生産性向上を支援/建設業関係予算5.6億円要求/国交省土地・建設産業局

 国土交通省の2016年度当初予算案のうち、土地・建設産業局が要求した建設業関係予算は、総額約5億6000万円となった。将来にわたる社会資本の品質確保と適切な機能維持を図るため、技能労働者の処遇改善などを通じた担い手の確保・育成を強化するとともに、地域建設業の生産性向上をバックアップする。建設業における女性活躍推進関連予算は前年度より増額し、次世代を担う女性リーダーの育成などを支援する。
 新規には、就労履歴蓄積システムの構築に向けた予算3000万円を盛り込んだ。15年度中に民間主体で作成される予定の基本設計などの内容について、処遇改善といった政策的課題の解決に役立つか検討し、必要に応じて改善提案を行う。システムは16年度後半の試行運用、17年度の本格運用を目指している。
 現場事故防止のための安全対策支援予算1100万円も新規計上した。大手ゼネコンや主要専門工事業者に蓄積されている事故事例や、実際の事故発生にまでは至らなかった「ヒヤリ・ハット」事例を収集。専門工事の職種別や作業手順別に事故事例を分類し、再発防止・現場改善事例も整理する。そして、だれでも閲覧可能な「建設現場事故データベース」を構築し、事故情報と対策の共有化を図る。テキストやDVDなどの事故防止啓発教材も作成・配布する。
 「もっと女性が活躍できる建設業」推進パッケージの予算は、前年度より500万円増えて5500万円となった。建設会社や業界団体、行政、教育機関などが連携した地域ぐるみのサポート活動を継続するとともに、次世代を担うリーダー層を育てる研修や、フレックス朝礼の導入などで家庭との両立を実現するモデル現場の支援を新たに始める。また、建設業以外にも女性活躍の機運を伝播させるため、メーカー側のシーズ・アイデアと建設業側のニーズをマッチングする多業種横断プラットフォームを整備。作業服や工具、仮設トイレ、現場用自動車などの開発者に生の声を届け、建設業で働く女性が望む各種商品の創造につなげる。
 15年度に創設した地域建設産業活性化支援事業には約1億7000万円を充て、内容を拡充する。アドバイザーによる相談支援や最大300万円の経費助成といった現行メニューに加え、生産性向上手法の見える化・モデル化に取り組む。
 生産性向上支援では、発注者・元請企業・下請企業間での発注見通しの共有やBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)活用などのベストプラクティスを集め、その具体的な導入・実践プロセスをマニュアル化する。製造業などの他産業を参考に需要予測から生産計画、生産実施、生産統制までの各プロセスを効率化する建設業版「生産管理モデル」の構築も目指す。
 「担い手3法推進サイクル」の創出に向けた予算として7100万円を計上した。まずはサイクルの起点となる実態把握をスピーディーにするため、毎年行っている入札契約適正化法に基づく実施状況調査をシステム化。回答する自治体側の事務負担を大幅に軽減し、最新状況の迅速把握で国や都道府県も的確に支援・助言ができるようにする。
 各種実態調査などを通じ、歩切りの根絶やダンピング対策制度の導入、債務負担行為の活用による平準化措置などについて、その効果を含めて具体事例を集めて公表する。併せて、多様な入札契約方式モデル事業も継続的に実施する。全国でワークショップや出張相談も行い、取り組みが遅れている発注者への直接的な働き掛けを強める。一連の取り組みを絶えず回し、現場改善につながる推進サイクルを生み出す。
 元請・下請取引の適正化・重層下請構造の改善のための調査費は約2400万円。毎年実施している下請取引等実態調査や、行き過ぎた重層下請構造の改善に向けた重層化要因分析調査を行う。
 このほか、外国人建設就労者受入事業関係に約7600万円を確保し、適正監理に万全を期す。

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