五洋建設「SEND工法」/底質汚染を効率除去/表層15cmの薄さで浚渫

【掘削土は吸引回収】
 五洋建設は、港湾や湖沼など閉鎖性水域の底質表層汚染を効率的に除去できる「SEND工法」を開発した。特殊なグラブバケットで、汚染物質が堆積している表層を15cmの薄さで剥ぎ取る。掘削土は密閉したバケット内で水と攪拌し、バケットに装着したポンプで吸い取って地上の処理プラントに送る仕組み。必要最低限の表層浚渫で済む上、掘削土をスラリー化して吸引回収するため、1サイクルごとにグラブを水上に引き上げる手間も省ける。主に放射性物質や有害化学物質などの除去を狙いとして開発した。今後、現地試験などを経て、実用化にこぎ着けたい考えだ。
 新工法は、掘削時の汚濁拡散を抑制する環境浚渫工法「END工法」に改良を加えた。グラブバケットに掘削土の攪拌ポンプと吸引用ポンプ、密閉確認センサーや深度計などを装着している。施工時にはGPSや4Dソナーなども活用しながら、精度と効率を追求する。
 これまで厚さ30cm程度が限界だった表層浚渫を、15cmまで薄くして余堀りを削減できる。掘削後はグラブを密閉し、攪拌ポンプで水流を起こして水と掘削土をスラリー状に混ぜ合わせた後、吸引ポンプを使って陸上に送る。石や枝葉などの異物はグラブ内のフィルターで抑え、グラブを開いた際にその場に落ちる。
 吸引回収によってクレーンによる揚土が不要となるため、短い作業サイクルでの施工が可能だ。このため、水深が深くなればなるほど従来比で作業効率が高まる。実機では1サイクルで4㎡、8㎡を剥ぎ取るバケットサイズを想定している。ポンプなどは汎用品のため簡単に調達できる。
 現在、実証実験用の小型バケットを作成し、施工効果などを確認している。グラブ密閉時には外の水を取り込むことなく内部の水だけで攪拌するため、含泥率は吸引式薄層浚渫の3-5倍まで高まる。
 底質表層汚染の除去では従来、表層部を必要以上に厚く浚渫したり、底面部をポンプで吸引するといった方法があったが、いずれも効率性の低さが課題となっていた。同社は、閉鎖性水域での除染ニーズなどに着目して今回の新工法の開発を進めてきた。今後、現地試験などを行った上で実用化を目指す。湖沼や港湾内などのホットスポットでの適用を視野に入れている。

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