乳頭温泉事故:作業マニュアルなく 検知器やマスク持たず

 秋田県仙北市田沢湖生保内(おぼない)の乳頭温泉郷近くの源泉施設で18日、硫化水素を吸ったとみられる作業員2人と市職員1人が死亡した事故で、市は19日、源泉を管理する市の担当者がガス検知器やガスマスクを役所に置いたまま現場に入っていたと明らかにした。作業マニュアルはなく、普段の検知器やマスクの使用状況についても市は「作業日報などがなく確かめられない」としている。安全管理がずさんだった可能性があり、県警仙北署や大曲労働基準監督署などが調べている。

 仙北署によると、司法解剖の結果、3人の死因は急性循環不全だった。死亡時刻は特定できていないが、硫化水素吸引から2、3時間後に死亡したとみている。市によると、同署などが19日行った実況見分で、現場の「カラ吹(ふき)源泉」周辺の硫化水素濃度はガス検知器のメーター(測定上限150ppm)を振り切った。

 市は同日午前と午後の2回、記者会見を開いた。午前の会見ではガス検知器について「(市職員が現場へ行く時に使った)車の中に置きっぱなしだったようだ」と説明したが、午後に「亡くなった担当者の机の上にガスマスクと一緒に置かれていた」と訂正した。

 また、死亡した作業員2人と市職員1人、別の市職員の計4人の行動について、市は18日、4人が一緒に行動し、作業員2人が急に倒れ、助けに行った市職員も倒れたと説明していた。だが19日の会見では、4人は作業員2人と市職員2人で別々に行動しており、作業員がいつごろ倒れたかは分からないと訂正した。「推測に基づく部分があった」としている。

 市などによると、死亡した3人は、源泉から約200メートル離れた場所の雪原にあったくぼ地(深さ約2メートル)に折り重なるように倒れていた。地下には、温泉を引くパイプから空気を抜くバルブが埋設されているという。

 

乳頭温泉事故:作業マニュアルなく 検知器やマスク持たず - 毎日新聞